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「正解に導く声かけ:療育と体育のあいだで」
うまく投げられない子どもを前にしたとき、直したいのはフォームではなく、もっと手前にある「体の使い方の地図」だと気づきます。肘を上げる、その小さな動きひとつが、すでに難所になっている。だから私は、間違いを探すのではなく、正解が増えていく道をいっしょに見つけることから始めます。 体育の現場では、「ボールを遠くに投げられない」という困りごとに出会うことが多いです。一般的には、投げる練習を重ねてフォームを整えましょう、となりがち。でも、療育の視点に立つと、問題はボールが手から離れる瞬間よりずっと前、目に見えないところで起きていることが少なくありません。たとえば、体の動かし方がぎこちない、あるいは使いやすい関節の角度をまだ身体感覚として持てていない。こうした「投げる前の困り感」が、投球そのものの苦手さを作っているのです。 私はまず、子どもの困り感がどこにあるのかをていねいに観察し、分析します。象徴的なのが「肘を上げる」という、いかにも単純に見える動き。大人は無意識に、自分の体が上げやすい角度や経路を知っています。ところが、その「上げやすさ」の感覚がまだ育っ
2月12日
教えることは、自信をプレゼントすること
自信とは、決して生まれつきのものではありません。それは、誰かが根気強く、愛情を込めて手渡してくれた「できた!」という小さな成功体験の積み重ねによって、少しずつ育まれていくものです。特に子どもにとっては、「これは絶対にうまくいく」という安心感が、新しい世界への扉を開く鍵となります。今日は、ある一つのボールを使って、子どもの心に確かな自信の灯をともす、シンプルでありながら奥深いアプローチについてお話しします。 私たちの療育の現場では、子どもたちが自信を持って学びに取り組めるよう、「ディスクリートトライアル・トレーニング(DTT)」という技法を大切にしています。これは、教育でよく言われる「スモールステップ」の考え方を、さらに細かく、丁寧に分解したアプローチだと考えてみてください。すべては、子どもが「必ず成功できる」経験から始めるためにデザインされています。 例えば、「色」の概念を教えたいとします。目の前にピンクのボールと青いボールを置いて、「ピンクはどっち?」と尋ねたとしましょう。大人にとっては簡単な問いでも、子どもにとっては最初から二つの選択肢で迷っ
2月11日
位置感覚という見えない羅針盤:ぶつからないためのやさしい練習
「椅子にぶつからないように歩いてね」と言われても、どうしてもぶつかってしまう子がいる。注意が足りないのでも、わざとやっているのでもない。彼らには、そもそも世界を渡るための「からだの地図」がまだ描ききれていないのだ。地図があれば避けられる障害物も、地図が曖昧ならただの偶然になる。私たちの仕事は、新しい地図を一緒に描き直すことから始まる。 成功事例を紹介したい。よくあるご相談のひとつに、「物にぶつかってしまう」というものがある。もちろん、環境の要因や単純な不注意が影響するケースもある。けれど、実際に観察してみると、「からだの位置感覚そのものがまだ使いこなせていない」ために起きていることが少なくない。 例えば、椅子の間を歩く場面を思い浮かべてほしい。「椅子にぶつからないように歩いてください」と言われたとき、多くの人は足取りと視線とからだの幅を無意識に調整して進む。これは、言語化されない「からだの地図」を頭の中で参照しているからだ。反対に、ぶつかってしまう子は、その地図がまだ曖昧だ。自分の肩幅、腕の長さ、足の運びと周囲の距離がつながっていない。意地悪でも
2月10日
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