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「はーい」が言えない君へ:手を挙げるという小さな一歩に隠された大きな世界

集団の中で、他の子たちが「はーい!」と元気よく手を挙げる中、ただ一人、静かに座っている我が子。その姿を見て、「どうしてこの子だけ…」と胸が締め付けられるような思いを抱いたことはありませんか。それは、やる気がないからでも、話を聞いていないからでもないのかもしれません。その小さな沈黙の裏には、私たちがまだ知らない、子ども自身の複雑な心と体の世界が広がっているのです。


「〇〇ちゃん、ぼーっとしているようですが、呼びかけにも反応がなくて…」

園の先生からそんな相談を受け、どうしたらいいのか分からず、一人で悩みを抱え込んでいる親御さんは少なくありません。特に未就学の頃、周りの子と同じように「手を挙げる」という単純な動作がうまくできないことは、多くの親にとって心配の種となります。

しかし、なぜ子どもは手を挙げられないのでしょうか。その理由は、一つではありません。

まず考えられるのは、そもそも「自分に話しかけられている」と認識できていないケースです。あるいは、「名前を呼ばれたら手を挙げて返事をする」という社会的なルールの概念が、まだ育まれていないのかもしれません。大人が当たり前だと思っている約束事も、子どもにとっては初めて学ぶ未知のルールなのです。

もう一つ、非常に重要な視点があります。それは、子ども自身は「手を挙げよう」と心の中で思っているにもかかわらず、その意思がうまく体に伝わっていないという可能性です。脳からの指令と、体を動かす感覚(専門的には固有覚と呼ばれます)がうまく連携できていないため、「手を挙げる」という動作にまで至らない。本人はやろうとしているのに、体がついてこないだけ、ということがあるのです。

私たちは、こうした子どもたち一人ひとりの状態に寄り添いながら、療育トレーニングを行っています。決して無理やりやらせるのではなく、「手を挙げる」という行為そのものが、子どもにとって楽しく、喜ばしい体験になるように環境をデザインするのです。

例えば、レッスンの中に「手を挙げる」というお仕事をたくさん盛り込みます。最初は指導者が子どもの腕をそっと持ち、クレーンゲームのアームのように一緒に動かしてあげることから始めます。そして、手が挙がった瞬間、すかさず「できたね!」「すごい!」と、周りの大人たちが満面の笑みで褒め、喜びを共有します。

「手を挙げたら、みんなが喜んでくれた」「注目してくれて、嬉しかった」

こうした成功体験を、本人が「楽しい」と感じられる環境の中で何度も繰り返すこと。それこそが、子どもの心と体を繋ぐ何よりの架け橋となります。強制されるのではなく、自らの喜びとして体を動かす経験を通して、子どもは自発的に「手を挙げたい」と思うようになるのです。

子どもが見せる一つの行動の裏には、私たちが想像する以上に複雑な背景が隠されています。もし、あなたのお子さんのことで何か気がかりなことがあれば、それは子どもの内なる世界を理解し、成長をサポートするための大切なサインなのかもしれません。私たちは、そんな一つ一つのサインに耳を傾け、子どもたちが楽しく自分の能力を発揮できるよう、日々のトレーニングを続けています。

 
 
 

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